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新たな学校像と施設環境に向けて

教育環境研究所 研究誌01
Eye-span2011.August

研究誌アイ・スパンの発刊にあたって


長澤 悟 Satoru Nagasawa


教育環境研究所は1988(昭和63)年に創立されました。その時代、教育の変革への気運が学校にも社会全体にも満ちていたように思います。計画についての先生方との話し合いは、反対意見も含め、熱の入った教育論になりました。

背景として、それより少し前の全国的な学校の荒れに対して、一斉画一授業から脱却し、個に応ずる教育を進めること、また、情報化や高齢化を前に、新しい学力観が課題として意識されていたことなどがあげられます。諸外国のオープン化の動きは学校空間の変化を後押ししました。

1980 年代から先進的な学校の取組が 各地で見られるようになりました。オープンスペースが設けられ、教育実践に成果を上げる学校が現れると、文部省は1984 年に多目的スペース、翌年に木材利用や基本設計費に対する補助制度を始めました。

これらは標準型の校舎からの脱却と豊かな生活環境の実現を促し、施 設を与えられるものから、教職員や地域の人々が参加し、想いを込めてつくるものへと変えました。その結果、学校施設は大きく変化を遂げたのです。

1990 年代に入ると、生涯学習や福祉の観点から複合化がテーマとなりました。当然、学校を構成する諸室・スペースについても見直しが必要とされます。これらを皆で考えるために課題や実例についての生きた情報が求められました。

そのニーズに応えるべく、教育環境研究所はアイ・スパンを発刊しました。創刊号表紙のタイトルは「『柔らかな』発想を広げる」。画一化したイメージから脱却し、新しい『教育環境』を創造するための情報発信を目標としました。

特集のテーマをたどれば、多目的スペースの掲示・展示、コーナーづくりと家具、コンピュータ環境、食事環境、図書環境、職員室、生活科の学習環境、特別教室、豊かな生活環境、教科センター方式の中学校、複合化、IT 化と続きます。2001年6 月までの12 年間に15 号を数えました。

21 世紀に入り最初の10 年紀に学校をめぐる状況や課題は大きく変わりました。耐震補強の確保が喫緊の課題となり、老朽化対策が待ち構えています。

防犯・事故防止・シックハウス対策等の安全・安心の確保など、守りを固める課題が相次ぎました。また、地球環境に優しいエコスクール、木の学校、小中一貫・連携校、特別支援教育やバリアフリー化などインクルーシブな学校の実現が図られました。そして本年3 月11 日の東日本大震災で再び実感されたのが、地域の核としての人々の心と活動をつなぐ学校の役割です。

一方、学校は何といっても教育の場です。教育の本質を踏まえつつ、時代に即した教育ビジョンを打ち立て、具体化するための教育方法とそれを支える教育条件の整備が重要です。学校の変革が始まった4半世紀前と比べると、熱気が少ない感じがします。

ゆとり教育論議の影響、多目的スペースの活用度、厳しい財政状況、教師の多忙等、理由はいろいろ考えられます。しかし、国や地域の未来にとって人材こそ宝です。新しい時代にふさわしい知恵と行動力を備えた人間を育てていかねばなりません。そのためには教育と教育環境の充実が不可欠です。

今回、ねらいも新たに研究誌アイ・スパンを発刊する運びとなりました。学校が地域を支え、地域が学校を支えるという考え方を基本に、新たな学校像と施設環境を提案していきたいと思います。

また、学校と生涯学習施設や福祉施設とが連携しながら、生活の質Quality ofLife を高める地域づくりを目標とします。そのために、学校を含む幅広い視野から、研究成果や学校づくりの実践報告を発信していきます。

どうぞご期待ください。