トップ  > 調査・レポート  > 地域の核となる学校

issue

Eye-span (アイスパン) 最新号2018.Aug,

バックナンバーを見る  >>
 

works

学校建築の変遷とIEE

IEE活動実績

調査・レポート

address

〒100-0014
東京都千代田区永田町2-13-10 プルデンシャルタワー12F
TEL 03-6205-8528 FAX 03-6205-8529

 

お問合せ・ご相談

地域の核となる学校

教育環境研究所 研究誌01
Eye-span2011.August

東日本大震災を踏まえて

長澤 悟 Satoru Nagasawa


はじめに東日本大震災で亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。
また、被災された多くの方々にお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興が適うことを願っております。


学校施設の安全性

文部科学省は東日本大震災を踏まえた学校施設の整備について、検討会による緊急提言を7 月7 日に発表した。学校の防災拠点としての役割を強化するための措置として、
  1. 学校施設の安全性の確保
  2. 地域の拠点としての学校施設の機能の確保
  3. 省エネルギー化の推進
の3つをあげている。

学校施設の安全性の確保では、耐震化の推進、非構造部材の耐震化、津波対策の必要性が述べられている。今回の地震では耐震補強の効果が認められ、8 割を超えたとされる耐震化の完成を早期に実現したい。

一方、天井等の非構造部材の落下等が数多くあり、点検や耐震措置を講じることの必要が示されている。体育館では身の隠し所がなくパニックになったとの報告もある。

避難場所としての機能を果たすだけでなく、余震が続く中でも安心して避難生活を送れるようにするためにも、耐震補強とともに大規模改造事業(安全管理対策施設工事)の拡充が望まれる。

今回の提言の特色は津波対策である。学校の高台移転やバリアフリーにも配慮した高台への避難経路の確保等が考えとして示された。安全な高台が周辺にない場合には屋外階段の整備等による高層建物の屋上への避難や、複合化を含めた学校の高層化が有効としている。

この場合には、避難は下階へ、そして外へという他の災害時とは違う避難行動パターンをとることになので、耐震性の確保は一層重要度を増す。

また、避難場所となる高層部分(屋上)の高さ、避難期間の想定、連絡手段を含むライフライン、地域住民を含めた避難人数の想定などが必要となろう。津波の規模、季節と気候、周辺施設の有無など、地域性や日常の学校活動などを総合して検討する必要がある。


避難場所としての機能性

地域の拠点としての学校施設の機能確保について緊急提言で注目されるのは、一口に避難というのではなく、避難状況を段階ごとに整理して、果たすべき機能と必要な施設設備をまとめていることである。

防災の分野では、避難状態は一般的に緊急避難(Evacuation) 、応急避難(Sheltering )、仮設居住(Refuge) に分けられる。

これをもとに、学校再開までのプロセスとして、被災直後、緊急避難する生命確保期、避難生活を送る生活確保期、学校機能再開期と整理し、さらに津波災害そのものからの避難を、救命避難期として最初にもう1段階置いている。この点は学校ならではのまとめ方として意義が感じられる。

これに照らすと、学校の高層化は救命避難期の対応のためで、生命確保以降には適さないことがわかるなど、必要な施設や対応の違いが整理して理解できる。

以下、今回の災害を通して感じた点をいくつか述べてみたい。

今回もトイレは大きな問題となった。阪神淡路大震災以降に限っても災害のたびに同じことの繰り返しである。いろいろな工夫は重ねられていると思うが、準備や避難時の対処方法を確立できないものだろうか。

下水の問題も大きな課題だ。津波被災地では下水処理施設の復旧の長期化という問題も加わったが、便槽に使えるピットの整備とは別に、公共下水道地域であっても学校や公園などの避難拠点には耐震性を確保した浄化槽を整備することを考えるべきだろう。

救援を得るために避難状況を他に伝えること、災害情報を得られることは、適切な行動をとり、安心して過ごす上で不可欠である。避難場所への情報・連絡設備の設置、テレビ配線等は必須だ。

家のテレビで情報を確認しようとして避難が遅れたという話や、救援を得るため停電で真っ暗な道を携帯電話がつながるところまで走ったという話も聞かれた。

自分たちで必要な情報を確保する必要性を説く自治体関係者もいる。災害情報ポータルサイトの効果的な活用も含め、地域ごとに必要とする情報を受発信できる仕組みづくりを考えなければならないだろう。

生活確保期においては、時間の経過につれて避難者の状態や要求内容は変化し、また個別化する。

プライバシーが求められることに対して、建築系の大学や建築関係者から簡易の間仕切りの提案や設置協力、仮設住居の提案が行われた。避難している人の尊厳を守り、自立を支えるための施設設備の確保は配慮すべき大きな課題である。

学校の再開は、教育機能の回復だけでなく皆の気持ちを明るくし、希望を感じさせてくれた。その際には一時的に避難生活と学校活動が同居する状況も生まれる。それをスムーズに行えたのには、避難施設を教室等の学校教育上必須の施設と区分しておいたことが有効だったという話も聞かれた。

施設計画上は、平常時の地域開放エリアが明確にゾーニング計画しておくことが有効であろう。

緊急提言には、防災機能の向上、防災担当部局との連携とともに、地域の拠点としての計画-複合化・バリアフリーの必要性があげられている。今回の災害においても避難者に対する教職員の献身的な働きについては、関係者の等しく指摘するところである。

いざという時に学校が頼られるのは施設があることと同時に、頼る存在としての教職員、人がいるからだということを改めて強く感じた。

それも含め、だからといって一方的に学校に依存するばかりではあってはならない。学校に期待する役割をまちづくりの中で明確にし、必要な対応をとることが大切である。

学校を地域づくりの核としてとらえ、その施設整備費用は単なる教育施設としてだけでなく、地域づくりの予算が加えられ、また教育委員会と一般行政部局とが一体になった検討が必要である。

それが新たな学校と地域の関係を生み出すとともに、安全・安心なまちづくりにつながることになる。