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“はきかえ”を考える

教育環境研究所 研究誌01
Eye-span2011.August

「家具」 から 「学校」をみつめる


長澤 悟Satoru Nagasawa

公共建築物で、出入口で“はきかえ” を行っているのは、今や学校だけだ
ろう。児童生徒のはきかえスペースを一般に昇降口と呼ぶが、これも学校だけと言える。

昇降口は一日の始まりに子どもたちを迎え入れる場として、朝日の当たる向きに配置し、明るく天井の高い、気持ちのよい空間としたい。また、作品の掲示や花や緑を置くことにより、潤いと毎日の変化が感じられ、交流を生み出す場とすることも大切だ。

学校建築計画の最初の研究成果の一つが1950 年代のはきかえの研究である。はきかえているのに校内が汚れる。その原因を明らかにし、解決方法を提案するのが目的だった。

はきかえの方法には面はきかえと線はきかえの2通りある。面はきかえは、ある範囲は上下足の混在を許し、下足入れの前ではきかえるものである。汚れの原因はそこにあった。靴に付いた土で床が汚れ、それが上ばきについて校内に持ち込まれていた。

戦後、道路舗装率の低い状況が背景にあった。これに対して提案されたのが線はきかえである。これは家の玄関と同様に、ある線を境に上下足のゾーンを明確に区分するもので、汚れの持ち込みをなくすのに効果を発揮し、現在では一般的な計画となっている。

線はきかえの場合の下足入れのデザインと配置には2 通りある。一つは線を挟んで下足の場に上足入れ、上足の場に下足入れを置く方法(図. 右)。もう一つが、箱を2 段にして上段を上足入れ、下段を下足入れとし、上下足の両方のゾーンから手が届くように配置する方法である(図. 左)。



いずれの場合も、混雑なくスムーズにはきかえが行われるためには、はきかえ線の長さを十分に確保することが大切で、ゆとりある昇降口の面積が必要である。

舗装率ほぼ100%の今日では、例えば校門と運動場が校舎を挟んで反対側になる場合などでは、昇降口を上下足とも通り抜けられるようにすると配置の自由度が高くなる。

さらに、登下校時のみは教室のロッカーまで通学靴で行き、そこで校内ばきにはきかえるという方法をとる学校もある。下足入れの間を通り抜ける昇降口でなく、開放的なエントランスホールとすることが可能になる。


下足入れのデザイン

線はきかえの場合、子どもの目の高さを超える下足入れが並ぶことになりがちである。

ここで紹介するのは同志社大学付属同志社小学校の昇降口である( 設計: 高松伸建築設計事務所)。

厳密な線はきかえのシステムを採用しつつ、くつ箱の代わりに、スチールバーの間に木の棚を渡し、クロームメッキのバーを個人用仕切りとしている。ディスプレイ棚のようなシースルーのデザインにより、圧迫感のない開放的な空間となっている。


鋼材で靴棚を吊るした昇降口。
全体が見通せて開放的な雰囲気がある。
同志社小学校(京都府)

はきもの棚。右の出入口側が上足棚、左が下足棚
同志社小学校



この玄関ホールは、東に比叡山を望み、正面には図書館がある。一部の床は透明ガラスで、床下の遺跡を見ることができる。まさに学校のシンボル的な空間となっている。

昇降口には傘置きも必要だ。地域により自転車用ヘルメット収納棚、寒冷地ではコート掛け、積雪地では乾燥機能が必要とされることもある。これらを総合的にデザインすることにより、学校の顔となるエントランスホールを実現したいものだ。



長靴が入る高さの箱を用意した線はきかえの下足入
新潟県見附市立今町小学校

金属のフレームを使った軽快なデザインの下足入
コート掛けの下にヒーターを設置
新潟県聖籠町立聖籠中学校
自転車通学のため、ヘルメット収納を組み込んだ下足入
福井県坂井市立丸岡南中学校